◇血流の変化に注目
なぜ加圧を行うとそれほどまでに効果があるのでしょう?
ここで重要なのが、加圧筋力トレーニングを行っている時に、筋肉の中の血流がどうなっているかです。
研究が行われた結果、抹消抵抗というのは、血流がいかに流れにくいかという指標ですが、加圧前の値を1.0とすると、良好な加圧をかけているときは1.7ぐらいになり、つまり1.7倍流れにくくなります。
次にベルトをゆるめて圧を取り除く(除圧する)と、加圧をする前にくらべて、抹消抵抗の値が0.6まで下がり、血流は流れやすくなります。
この加圧と除圧の相乗効果で驚くべき変化が体に現れます。
血液循環の変化自体は、通常の筋力トレーニング中にも起こりますが、加圧は、筋肉が縮む時に血液がしぼり出され、緩むときにより多くの血液が流れ込むその過程を、特に強調したものだと言えます。
◇成長ホルモンの効果
血流の次に筋線維の状態を見てみると、加圧をかけてトレーニングをしたときには、負担は軽くてもたくさんの筋線維が使われます。
普通のトレーニングをしているとき、筋肉を目一杯使っているつもりでも、実はかなり余力を残しているのですが、これは、イザというときの”火事場の馬鹿力”のために、体が無意識に制御をかけているから。
加圧するといい意味で筋肉がだまされて、いつもより活発に働いてしまうのです。
さらに、加圧筋力トレーニングでは内分泌系の活性が上がります。
まず、疲労物質と呼ばれる血液中の乳酸の濃度がいちじるしく上がり、少し遅れて成長ホルモンが分泌されます。運動して15分後には、成長ホルモンは運動前の平均値から100倍以上増加するのです。
脂肪を落とし、筋肉を引き締め、全身的に若返る効果があるという成長ホルモンですが、それが筋肉に作用し、太くしていくのだと考えられています。
そのほかにも、神経の終末からいろいろな物質が出て筋肉を刺激する効果、筋肉が分泌して筋肉自身に影響を与える成長因子という物質の効果、一酸化窒素という物質が適度に増える効果、などが考えられています。